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東京家庭裁判所 昭和55年(少)101701号 決定

少年 B・S(昭三六・四・二四生)

主文

少年を東京保護観察所の保護観察にする。

理由

(非行事実)

昭和五五年少第一〇一七〇一号道路交通法違反保護事件については、昭和五五年一月三〇日付検察官送致書(編略)記載のとおりであり、昭和五五年少第三〇〇七六八号業務上過失傷害、道路交通法違反保護事件については、昭和五五年四月二一日付検察官送致書(編略)記載のとおりである。

昭和五五年少第一〇四一〇四号道路交通法違反保護事件の非行事実は、つぎのとおりである。すなわち、「少年は、都下練馬区を根城とする暴走族○○○○○○○○の総リーダーであるが、昭和五五年二月二日午後一一時ころ、練馬区○○○○×丁目×番×号所在のレストラン「○○○○○○○」駐車場に輩下の者等約五○名と集合し、同所で上記約五○名の者が隊列を組んで所沢市大字○○所在の○○○へツーリングして途中赤信号無視などの暴走をすることについて指揮をとり、上記約五○名の者と共謀のうえ、同所を隊列を組んで出発し、先頭を走つた少年の運転車は出発直後道を間違えて隊列から離れてしまつたが、他の約五○名くらいの輩下の者は、上記共謀のとおり、暴走途上の二月二日午後一一時四五分ころ、所沢市○○町×番×号先信号の設置されている交差点に差しかかつた際、上記約五〇名の者が四輪車約五台、二輪車約二〇台くらいで、これらの車を約七〇メートルにわたつて連ね、かつ道路幅いつぱいに広がり並進して、浦和方面から青梅方面に向け赤信号を無視して暴走したため、折りから左方道路より青信号に従つて左折進行してきたA(三六歳)運転の普通乗用自動車に対し、危険を感じさせて避譲停止をさせその進路を妨害し、もつて共同して、著しく他人に迷惑を及ぼす行為をしたものである。」この点の検察官送致の事実は少年も暴走等の実行行為に加担していたことになつているが、証人B、同Cの各証言および当審判廷における少年の供述に諸般の事情を総合して考慮すれば、上記事実のとおり認定するのが相当である。

(法令の適用)

昭和五五年少第一〇一七〇一号事件の非行事実については道路交通法八条一項、四条一項、一一九条一項一号の二、同法施行令一条の二

昭和五五年少第三〇〇七六八号事件の非行事実については刑法二一一条前段、道路交通法七二条一項後段、一一九条一項一〇号

昭和五五年少第一〇四一〇四号の上記非行事実については、道路交通法六八条、一一八条一項三号の二、刑法六〇条

なお、道路交通法六八条のいわゆる共同危険行為等の禁止については、これを「共同して」なすことを要件としているところ、その意義は共謀者のなかで二人以上の者が現場において共同して実行行為をすることを要し、かつそれで足りるという趣旨であると解すべきであり、したがつて、少年のように、上記罪を犯すことを共謀しながら、自らは何らの実行行為を分担しなかつた者に対しては、刑法六〇条の適用により、共同して犯行をした数人の行為につき共同正犯の責任を負わせるのが相当である(暴力行為等処罰ニ関スル法律一条一項にいわゆる「数人共同シテ」の解釈につき同旨の判示をするものとして最一小判昭和三四年五月七日刑集一三巻五号四八九頁参照)。

(少年の処遇)

少年の本件各非行の態様、性格、保護環境等にかんがみれば、少年を相当期間保護観察に付するべきものと認めるので、少年法二四条一項一号、少年審判規則三七条一項により主文のとおり決定する。

(裁判官 梶村太市)

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